研究背景・目的
地球表面のおよそ70%は海であり、人類の生存と発展のために天然資源や海洋生物の調査が盛んに行われています。海中にあるものの状態を正しく認識するためには、光の三原色であるRed、Green、Blue(RGB)の色と3次元形状、モーションがとても重要です。それらの情報は、3Dビデオの撮影データから取得することができます。現在、商品化している3Dビデオからこれらの情報を取得する方法として、人間の視覚システムを模倣するステレオ(Stereo)、ストライプや格子状のパターンを利用するストラクチャードライト(Structured Light)、光の飛行時間を測定するタイム・オブ・フライト(Time-of-Flight)などがあります。しかし、水中の対象物の3次元形状やRGBの色を正しく測定することはこれまで困難でした。
研究内容
水中の対象物の3次元形状やRGBの色を正しく測定できるようにするため、水中シーン専用の「マルチスペクトルRGB-Dカメラ」の研究開発を推進しています(図)。このカメラの最大の特徴は、水の吸収特性に基づく革新的な「Trispectral Depth Sensing」という3次元復元方法です。RGBカラーについても、水の影響を除いて、対象物本来の色に修正することができます。高速並列処理により、3次元形状とRGB色を統一して、高解像度3次元ビデオをリアルタイムで出力することができます。
産業応用の可能性
マルチスペクトルRGB-Dカメラは、魚の3次元行動軌跡解析による養殖技術の高度化や、水の中に隠れている文化遺産の3次元デジタル化、珊瑚の成長状態の調査など、さまざまな応用分野で役立つことが期待されます。