研究背景・目的
近年、AI技術の進歩により、さまざまな意思決定の自動化が可能になりました。例えば、各地で急速に普及が進んでいるライドシェアリングサービスでは、誰でも空き時間を使ってドライバーになり収入を得ることができます。それにともない、意思決定アルゴリズムの公平性・透明性の確保が喫緊の課題となります。前述のライドシェアリングサービスでは、ドライバー間に不公平感のないように適切な顧客割当を行うことで、サービスの信頼性を維持する必要があります。私は、異なる好みを持ちうる人々にどのように公平に資源を配分すればよいかを数理的に研究しています。公平性を保証する資源配分メカニズムを理論的に考え、さらに、この公平性を条件にするとき、どれほど計算量がかかるかを理論的に解析しています。
研究内容
資源配分メカニズムの中でもわかっていないことが多いのが、私が研究している「離散量の配分」です。離散量とは、切り分けることができない量のことで、例えば、車やテレビ、貨幣などには、それ以上細かくできない単位があります。切り分けられないものがいくつもあって、それを何人かで公平に配分するケースは、タスク割当、財産配分など、多くの状況で起こり得ます。離散量の場合、完全に公平な妬みのない状態が達成できないことが知られています。しかし、私のこれまでの研究から、タスク割当などの広い文脈で、近似的に公平な状態、すなわち、各々の妬みの度合いをできるだけ小さくするような配分が存在し、効率的に計算できることがわかりました。
産業応用の可能性
公平な資源配分メカニズムの研究は、論文の査読割当、ライドシェアリングなど、大規模な割当システムに応用可能性があると考えます。しかし、公平性の概念やそれらを満たす解を求めるアルゴリズムは、非専門家にとってわかりづらい場合が多々あります。今後、アルゴリズムの説明可能性にも取り組み、産業応用の可能性を広げたいと考えています。