高性能計算からサイバーセキュリティ:

Society5.0実現に必要な要素技術の研究

石川 裕

アーキテクチャ科学研究系

教授

研究分野

システムソフトウェア

高性能並列計算

サイバーセキュリティ

研究背景・目的

 第5世代移動通信システム(5G)の普及が進むなか、大量のIoT機器等とクラウド上のサーバやスーパーコンピュータとが連携してビッグデータ処理を行う新しい応用分野が生まれています。ムーアの法則の終焉を迎えようとしている現在、コンピュータの電力当たりの性能向上はハードウェア構成だけでなくソフトウェアによる最適化が必須となっています。このような背景のもと、スーパーコンピュータの性能を引き出し使い勝手の良い利用環境を実現するための

研究内容

 2021年4月のNII着任以前は、スーパーコンピュータ「富岳」の開発プロジェクトリーダーを務め、通信ライブラリ、ファイルI/Oライブラリ、オペレーティングシステムの研究開発を行いました。「富岳」やその商用版富士通FX1000で使われているMPICH-Tofuというソフトウェアや軽量 OS カーネル HK/McKernelの研究開発も担当。また気象レーダの観測データを瞬時にスーパーコンピュータに転送するソフトウェアJIT-DTも開発しました。JIT-DTは2016年度から理化学研究所の気象予測の実運用に使われ、2021年の東京五輪期間のゲリラ豪雨予報実証実験にも使われました。これらのソフトウェアはオープンソースとして配布しています。

 NIIに着任後は、サイバーセキュリティ分野に注力し、IoT機器の挙動をモニタリングし想定外の挙動を検出、セキュリティポリシーに従って制御する研究を進めています。

産業応用の可能性

 MPICH-Tofu自体はTofuDネットワーク向けの実装ですが、本ソフトウェア開発のノウハウを使い、新しいネットワーク向けMPI通信ライブラリの実装に応用できます。IHK/McKernelは東京大学と筑波大学が共同運用しているOakforest-PACSスーパーコンピュータでの実績があります。Intelx86系CPUを搭載したスーパーコンピュータでIHK/McKernelを使うことによりスケーラブルな計算環境を実現することができます。

 JIT-DTは時系列で生成されるデータを自動的にインターネット経由でスーパーコンピュータ上のアプリケーションにデータを転送するソフトウェアです。センサーデータなどをスーパーコンピュータ上で処理したいアプリケーションに応用することができます。

図 研究概要

冊子版バックナンバー

PDFダウンロード