研究背景・目的
日本では、高度経済成長期に構築された社会基盤の老朽化が進んでおり、それらの社会基盤を効率的に維持管理することが求められています。例えば、日本には70万本もの道路橋がありますが、築50年を経過した橋梁が増えており、低コストで損傷などを見つける必要があります。対象構造物の健全度をはかるモニタリングは、従来、人の手によって行われてきましたが、社会基盤を構成する大量の構造物のモニタリングには、センサーや監視カメラなどの計測機器を用いて集められたモニタリングデータの収集・分析を行うシステムが必要になります。また、情報処理技術を活用した社会基盤のモニタリングは、情報学と土木工学にまたがる技術で、両分野の専門家の協業を促進するプラットフォームも重要になります。
研究内容
私たちは、橋梁に設置された監視カメラおよびセンサーより得られるデータから橋梁上を通過する車両を検出し、その諸元と重量を推定する技術(図1)を開発しました。映像データから通過車両の速度や車軸数などの諸元を求め、センサーデータ解析用ニューラルネットワークの学習に必要な大量訓練データを自動的に獲得し、センサーデータから車両重量などの諸元を推定します。
また、映像・センサーデータを収集・蓄積するとともに、そのデータの解析に用いるソフトウェアツールを共有することで、専門家の分析を支援する社会基盤モニタリングプラットフォーム(図2)を試作しました。
産業応用の可能性
私たちが開発した車両検出技術は橋梁にかかる負荷を推定し、その維持管理に役立てるものですが、そこで使われている映像・センサーデータ解析技術は、その他の社会基盤のモニタリングにも応用できる基本技術となっています。また、複数の橋梁で計測したデータを統合することで道路網における交通状況のモニタリングに活用することも考えられます。社会基盤モニタリングプラットフォームはデータの収集・管理に加えて、分析過程を記録することもでき、分析ノウハウの共有にも役立ちます。