安全かつ効率的にデータを収集・蓄積・解析

データ駆動型の研究開発促進を支援する

竹房 あつ子

アーキテクチャ科学研究系

教授

研究分野

Internet of Things(IoT)

クラウド

サイバーフィジカルシステム

研究背景・目的

 生産性の向上や社会システムの効率化、新たな技術やサービスの創出を行う超スマート社会Society 5.0の実現に向けて、IoTを活用して各種センサデータの高度な解析を行うデータ駆動型研究開発の必要性が高まっています。NIIでは、安全なIoTシステムの構築を支援するため、大学やクラウドの計算機からセンサ端末が接続されたモバイル環境まで、仮想的な専用回線(VPN)を用いて閉域網を構築する実証実験環境、「モバイルSINET」を運用しています。しかし効率のよいIoTシステムを構築するのは非常に困難で、特に医療情報のような秘匿情報を扱う場合には、VPNだけでは安全性が担保できません。私たちは、安全かつ効率的なIoTデータの収集・蓄積・解析を支援するソフトウェアSINETStreamを開発しています。

研究内容

 IoTシステムの構築を容易にするために、SINETStreamでは簡易なAPIと安全かつ効率のよいシステム構築に必要な機能を提供しています。IoTシステムは、大量のセンサデータを確実に収集する仕組みであるメッセージブローカを利用しますが、既存のブローカソフトウェアやクラウドIoTサービスは性能特性や運用コストが異なるため、初期段階で適切なブローカを選択するのは困難です。SINETStreamのAPIを利用すれば、開発するプログラムを改変することなくさまざまなブローカの利用が可能です。また、センサ端末の認証・認可、データの暗号化、性能チューニング支援機能も提供し、安全かつ効率的なシステムの構築を可能にします。

 モバイルSINETでのSINETStreamを用いたシステム構築事例を広める活動も進めるとともに、安全なIoTシステムの構築手法を理論面、システムソフトウェア面で確立することをめざすCRESTプロジェクトも開始しました。

図1)データ収集基盤(通称「モバイルSINET」)

産業応用の可能性

 SINETStreamはオープンソースソフトウェアであり、商用インターネット環境でどなたでも利用することができます。VPNだけでは情報漏洩やサイバー攻撃などのリスクを回避するには不十分であり、SINETStreamで安全なIoTシステムの構築を支援します。また、今後5G/6G技術により、性能バランスやサービス需要が大幅に変わることを考慮すると、SINETStreamのプログラム可搬性や性能チューニング支援機能も開発コストの削減に役立ちます。

図2)SINETStreamを用いたオンラインビデオ解析実験
(参考)YOLO v3: https://pjreddie.com/darknet/yolo/, OpenPose: https://github.com/CMU-Perceptual-Computing-Lab/openpose

冊子版バックナンバー

PDFダウンロード